一杯ができるまで。
和翠の抹茶が生まれるまで。
静かに積み重なる、十の工程。
第一章|春を待つ一年
陽を浴びて育つ。だから選ばれる。
選ぶのは、一番茶だけ。
茶の木は、秋から冬にかけて静かに力を蓄えます。
春が訪れると、その力は最初の新芽へと向かう。それが一番茶です。甘みも。旨みも。その年のはじまりも。
和翠が選ぶのは、この最初の収穫だけ。二番茶にも、三番茶にも役割はあります。
けれど、和翠の名を冠することはありません。
第二章|
光を遮る二十日間
光を遮る。
それが始まり。
摘採の二十〜三十日前。
畑は覆われ、葉はゆっくりと変わり始めます。
緑は深く。甘みは豊かに。
抹茶の鮮やかな色は、この時間から生まれます。
光を遮るという、ひとつの選択によって。
第三章|
光が戻る日
光が戻る。
時計が動き出す。
光が戻ると、
時間との競争が始まる。
摘採の直前、覆いは外されます。葉に光が戻ると、変化は再び動き始める。
農家が見るのは、時計ではありません。
空の色。葉の表情。風の気配。
その瞬間だけは、教科書にも載っていない。
第四章|摘む
覆いを外す。すぐに摘む。
畑から工場へ。
立ち止まる時間はない。
摘み取られた葉は、そのまま工場へ運ばれます。
熱を持たせないように。変化を進めないように。
守るべきは、摘みたての鮮度です。
急ぐのは、葉を守るため。ゆっくりなのは、葉を敬うため。
第五章|熱を逃がす
葉を広げる。
熱をためない。
一時間に百キロ。
葉が重ならないように。
工場へ届いた葉は、まず広げられます。
積み重なったままでは、葉は内側から熱を持ってしまう。
だから広げる。空気を通す。
そのひと手間が、摘みたての鮮度を守ります。
第六章|色をとどめる
緑を、とどめる。
一瞬の熱。
色を守るために。
蒸しの前に、細かな葉片は取り除かれます。残った葉は蒸し機へ。ほんのわずかな時間。
その熱が、色を守り、香りを閉じ込める。抹茶の鮮やかな緑は、ここで決まります。
第七章|風が仕事をする
葉をほぐすのは、
風の仕事。
持ち上がる。落ちる。
そして、ほぐれる。
蒸した葉は、まだ水分を含み、互いに重なり合っています。
そこで使うのは風。何度も持ち上げ、何度も落とす。
その繰り返しで、葉は一枚ずつ離れ、表面の水分も取り除かれていきます。
第八章|かたちをつくる
揉まない。
平らなまま。
三つの熱をくぐる。
抹茶になるために。
多くの日本茶は、揉みながら形をつくります。
けれど抹茶になる葉は、揉まない。
平らなまま、三つの温度帯を通り抜けていく。
そうして生まれるのが、抹茶の原点となる葉のかたちです。
第九章|それぞれの役目
ひとつの葉。
ふたつの行き先。
捨てるものはない。
茎もまた、お茶になる。
炉を通り抜けたあと、葉と茎は分けられます。
葉は抹茶へ。茎はほうじ茶へ。
役目は違っても、どちらも茶葉の一部。
収穫は、ここから二つの道へ進みます。
第十章|整える
もうひと手間。
最後の仕上げ。
今、整える。
後で、美しく挽く。
大きな葉は戻し、細かな葉片は取り除く。
サイズを揃えるのは、石臼で均一に挽くため。
残るのは、鮮やかな緑と整った葉。
抹茶になる、その一歩手前です。
Wasui's Promise
抹茶だけではない。
その背景まで。
日本の畑で育った葉。日本の工場で重ねられた工程。
そして、それを支える人の手。
私たちは、収穫の背景にいる人たちと直接つながり、
その一杯が、どこで生まれたのかを隠しません。
すべての抹茶には、その来歴を記したプロダクトパスポートが付属します。
産地。品種。遮光期間。等級。
一杯の背景まで、届けるために。